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夜のトイレはなぜコワい?~あの世とこの世をつなぐバショ~【中編】【文化資料館時の記事】
~2023.12.31
ぴじゅうからのお部屋
(2020/9/2)
ハーイ、ぴじゅうからちゃんですぴ。驚異的な暑さも少し落ち着いてきたけど…。みんな熱中症対策には例年以上に力を入れて、何とか元気に乗り越えていこうっぴ!(泣)
さてさて、「ぴじゅうからのお部屋」第7回目だっぴ。今回はまた坂口さんが来てるっぴ。夜のトイレがコワい理由、今日こそ教えてもらうっぴよ?!
(以下、ぴじゅうからちゃん:ぴ、坂口:坂)
ぴ)はいはい、坂口さん!本日もおいらのお部屋にいらっしゃーい。待ちわびたっぴよ
坂)ぴじゅうからちゃん、お疲れ様ですー。
お待たせしました、「夜のトイレはなぜ怖い?」の続きです。今回はちょっぴり複雑な話になるかも。
ぴ)ふむふむ、まあ おいらは朝飯前だと思うけど…そこを簡潔に、面白く伝えるのも文化資料館学芸員のオシゴトだっぴよ!はいっ、早速いってみようっぴ~。
確か前編の締めで、ヒントは「境界」って言ってたっぴね?どういうことか教えてっぴ~。
坂)はーいセンパイ、頑張ります!
ところで、よく覚えてましたね。そう、トイレが怖い理由は「境界」にあったのです。ぴじゅうからちゃん、境界ってどんな意味かしら?
ぴ)えーと、一般的には土地と土地、あるいは物事と物事の区切り目や間のことだと思うっぴ。
坂)そうそう。何かと何かを区切るときの境目のことを言うよね。でも、今回いう「境界」っていうのは、ちょっぴり違うニュアンスなの。
私たちは普通「なにか」を認識するときには、無意識にその対象を分類して、枠組みに収めることで理解しようとするの。この枠組みの違いが、文化の違いや、考え方の違いを生む要素ともいえるよね。
でね、必ずしもこの枠組みの中に収まりきらない存在が出てくる。これを「境界」と考えるの。
[[size|10|【図1】枠組みに収められない、枠からあぶれ出た存在が「境界」だっぴ。
図でいうと、青い枠組みに属していない、赤い部分が「境界」に属する範囲だっぴね]]
坂)枠組みに収めて捉えられない、ということはすなわち、認知しきれない…よく分からないヘンなもの、不気味なもの、良くないもの、と考えられるの。ときには無秩序や穢れの象徴として忌み嫌われることもあるんだよ。
ぴ)うーーん、そういうものかっぴ…?もうちょっと分かりやすく、具体例とかないかっぴ?
坂)おっけー。じゃあ、抜けた髪の毛とか切った後の爪、垢とかはどう?どんなイメージ?
ぴ)ううっ…正直、あまり気持ちの良いものではないっぴね。単純に雑菌が繁殖するから汚いんだけど、なんかそれ以上に、何とも形容しがたいイヤ~な感じがあるっぴ。
坂)そう!まさにその感覚こそが、「境界」に対する忌避の感情だよ。
この例についていえば、もともと自分の身体の一部だったものが、離れて外界のものになった。従って自分の内界と外界の「境界」にあたる存在になったと考えられる。だから、汚らわしく感じるともいえるの。
坂)実は、トイレも「境界」だと考えることができるんだよ。
まず、トイレは「用を足す」場所だよね。そもそも排泄物自体が雑菌の多さやニオイのせいで嫌厭されるものだけど…それ以上に嫌な感覚があるのは、排泄物自体が境界性をもつからだと言えるの。
排泄物はもともと私たちの身体の中にあったものだけど、不要なものとして体外に排泄されると外界のものになる。つまり自分の内界と外界の「境界」であるといえる。
さらに、排泄物は肥料として使われていたのは知っているかしら。加工して下肥(しもごえ)と呼ばれる肥料になるんだけど、現在でもつかっている人もいるんだよ。つまり、人間と自然・大地との「境界」にあるとも考えられるの。
強い境界性をもつ排泄物と密接にかかわる場所であるから、トイレは嫌な場所・怖い場所だと感じるんじゃないかしら。
ぴ)なるほど~?なんかあんまりピンと来ないっぴね、もう一声ちょうだいな。
坂)次に、トイレそのものの境界性について。前にみせた旧和田家の平面図は覚えてるかしら?
ぴ)あっ、覚えてるっぴよ!これ(↓)っぴね?
【図2】旧和田家住宅の平面図だっぴ!トイレは確かここだっぴね?
ぴ)建物の北の端っこにあるっぴね。
坂)そうそう。旧和田家のトイレ(便所)は端っこながらも屋内にあるんだけど、もっと古い時代は、トイレは屋外にあることが普通だったんだよ。この立地によって、住宅と外界の「境界」に位置するとも考えられるの。
排泄物の持つ境界性、そしてトイレのもつ境界性。これらによって、昔の人たちはトイレが怖い場所・不思議な場所だと考えるようになったんじゃないかな。
ぴ)ほほ~う…トイレっていう場所は、色んなものとの「境界」にあたる場所なのかっぴ。綺麗に整備された水洗トイレでは、大地との繋がりとか、外界と住居との間とかの感覚は無いけれど…。外にあるぼっとん便所って考えると、なるほど納得だっぴ。
坂)あと、トイレでは用を足すために服を脱ぐよね。服を脱いだり、用を足す瞬間はかなり無防備な状態だと思うんだけど…ひっそりして狭くて暗くて、その上なんとなく不気味な場所でそんな無防備な状態に身を置かないといけないのも、「怖い」という感情を呼び起こす原因だと思うよ。
ぴ)ははん、そう言われればそうかもね。そう考えるとあんまり怖くなくなってきた気がするっぴ。
あれっ、そういえば…この間言ってた「異界につながる」とかいうめちゃ怖ワードについてはどうなったんだっぴ?!ちょっと!ここが解決しないとまだコワいっぴー!!!
坂)あら、今回もすでにずいぶん長くなっちゃった…トイレと異界の話はまた次の機会っていうのはいかが?
まだまだ肝試しが必要なくらい暑い日が続きますから、みなさんどうぞご自愛くださいね。
ぴ)あぁ…締めるのはおいらの仕事なのに~…。
次回ついに「夜のトイレ編」終結!それでは皆さん、次回もお楽しみに~!ぴぴぴ~!!
前回の「夜のトイレ」シリーズはこちら
ハーイ、ぴじゅうからちゃんですぴ。驚異的な暑さも少し落ち着いてきたけど…。みんな熱中症対策には例年以上に力を入れて、何とか元気に乗り越えていこうっぴ!(泣)
さてさて、「ぴじゅうからのお部屋」第7回目だっぴ。今回はまた坂口さんが来てるっぴ。夜のトイレがコワい理由、今日こそ教えてもらうっぴよ?!
「コワい」の原因「境界」に迫る
(以下、ぴじゅうからちゃん:ぴ、坂口:坂)
ぴ)はいはい、坂口さん!本日もおいらのお部屋にいらっしゃーい。待ちわびたっぴよ
坂)ぴじゅうからちゃん、お疲れ様ですー。
お待たせしました、「夜のトイレはなぜ怖い?」の続きです。今回はちょっぴり複雑な話になるかも。
ぴ)ふむふむ、まあ おいらは朝飯前だと思うけど…そこを簡潔に、面白く伝えるのも文化資料館学芸員のオシゴトだっぴよ!はいっ、早速いってみようっぴ~。
確か前編の締めで、ヒントは「境界」って言ってたっぴね?どういうことか教えてっぴ~。
坂)はーいセンパイ、頑張ります!
ところで、よく覚えてましたね。そう、トイレが怖い理由は「境界」にあったのです。ぴじゅうからちゃん、境界ってどんな意味かしら?
ぴ)えーと、一般的には土地と土地、あるいは物事と物事の区切り目や間のことだと思うっぴ。
坂)そうそう。何かと何かを区切るときの境目のことを言うよね。でも、今回いう「境界」っていうのは、ちょっぴり違うニュアンスなの。
私たちは普通「なにか」を認識するときには、無意識にその対象を分類して、枠組みに収めることで理解しようとするの。この枠組みの違いが、文化の違いや、考え方の違いを生む要素ともいえるよね。
でね、必ずしもこの枠組みの中に収まりきらない存在が出てくる。これを「境界」と考えるの。
[[size|10|【図1】枠組みに収められない、枠からあぶれ出た存在が「境界」だっぴ。
図でいうと、青い枠組みに属していない、赤い部分が「境界」に属する範囲だっぴね]]
坂)枠組みに収めて捉えられない、ということはすなわち、認知しきれない…よく分からないヘンなもの、不気味なもの、良くないもの、と考えられるの。ときには無秩序や穢れの象徴として忌み嫌われることもあるんだよ。
ぴ)うーーん、そういうものかっぴ…?もうちょっと分かりやすく、具体例とかないかっぴ?
坂)おっけー。じゃあ、抜けた髪の毛とか切った後の爪、垢とかはどう?どんなイメージ?
ぴ)ううっ…正直、あまり気持ちの良いものではないっぴね。単純に雑菌が繁殖するから汚いんだけど、なんかそれ以上に、何とも形容しがたいイヤ~な感じがあるっぴ。
坂)そう!まさにその感覚こそが、「境界」に対する忌避の感情だよ。
この例についていえば、もともと自分の身体の一部だったものが、離れて外界のものになった。従って自分の内界と外界の「境界」にあたる存在になったと考えられる。だから、汚らわしく感じるともいえるの。
トイレの境界性(1) ~排泄物と「境界」~
坂)実は、トイレも「境界」だと考えることができるんだよ。
まず、トイレは「用を足す」場所だよね。そもそも排泄物自体が雑菌の多さやニオイのせいで嫌厭されるものだけど…それ以上に嫌な感覚があるのは、排泄物自体が境界性をもつからだと言えるの。
排泄物はもともと私たちの身体の中にあったものだけど、不要なものとして体外に排泄されると外界のものになる。つまり自分の内界と外界の「境界」であるといえる。
さらに、排泄物は肥料として使われていたのは知っているかしら。加工して下肥(しもごえ)と呼ばれる肥料になるんだけど、現在でもつかっている人もいるんだよ。つまり、人間と自然・大地との「境界」にあるとも考えられるの。
強い境界性をもつ排泄物と密接にかかわる場所であるから、トイレは嫌な場所・怖い場所だと感じるんじゃないかしら。
ぴ)なるほど~?なんかあんまりピンと来ないっぴね、もう一声ちょうだいな。
トイレの境界性(2) ~トイレと「境界」~
坂)次に、トイレそのものの境界性について。前にみせた旧和田家の平面図は覚えてるかしら?
ぴ)あっ、覚えてるっぴよ!これ(↓)っぴね?
【図2】旧和田家住宅の平面図だっぴ!トイレは確かここだっぴね?
ぴ)建物の北の端っこにあるっぴね。
坂)そうそう。旧和田家のトイレ(便所)は端っこながらも屋内にあるんだけど、もっと古い時代は、トイレは屋外にあることが普通だったんだよ。この立地によって、住宅と外界の「境界」に位置するとも考えられるの。
排泄物の持つ境界性、そしてトイレのもつ境界性。これらによって、昔の人たちはトイレが怖い場所・不思議な場所だと考えるようになったんじゃないかな。
ぴ)ほほ~う…トイレっていう場所は、色んなものとの「境界」にあたる場所なのかっぴ。綺麗に整備された水洗トイレでは、大地との繋がりとか、外界と住居との間とかの感覚は無いけれど…。外にあるぼっとん便所って考えると、なるほど納得だっぴ。
坂)あと、トイレでは用を足すために服を脱ぐよね。服を脱いだり、用を足す瞬間はかなり無防備な状態だと思うんだけど…ひっそりして狭くて暗くて、その上なんとなく不気味な場所でそんな無防備な状態に身を置かないといけないのも、「怖い」という感情を呼び起こす原因だと思うよ。
ぴ)ははん、そう言われればそうかもね。そう考えるとあんまり怖くなくなってきた気がするっぴ。
あれっ、そういえば…この間言ってた「異界につながる」とかいうめちゃ怖ワードについてはどうなったんだっぴ?!ちょっと!ここが解決しないとまだコワいっぴー!!!
坂)あら、今回もすでにずいぶん長くなっちゃった…トイレと異界の話はまた次の機会っていうのはいかが?
まだまだ肝試しが必要なくらい暑い日が続きますから、みなさんどうぞご自愛くださいね。
ぴ)あぁ…締めるのはおいらの仕事なのに~…。
次回ついに「夜のトイレ編」終結!それでは皆さん、次回もお楽しみに~!ぴぴぴ~!!
前回の「夜のトイレ」シリーズはこちら